研究概要 |
本年度は肝細胞内のイノシトール3リン酸濃度に及ぼすハロタン,セボフルランの影響をハートレー系雄モルモットの分離肝細胞で検討した. 1. プレインキュベーションと細胞活性に及ぼす影響 細胞活性はハロタンの還元活性で検討した.ハロタンの還元活性はプレインキュベーション1時間まで時間とともに増加し,2時間でほぼ一定に活性を示した.従って,これ以降の実験は3時間のプレインキュベーション後に行った. 2. 肝浮遊細胞の生存率の検討 本実験に使用したハートレー系雄モルモットの肝浮遊細胞の生存率はハロセンと30分の保温で約14%低下した。 3. ハロセンの嫌気的脱ハロゲン化活性の経時変化 ハロセンの嫌気的脱ハロゲン化活性はハロセンと30分の保温でほとんど低下しなかった。 4. 肝細胞内イノシトール3リン酸濃度のハロタンによる影響 肝細胞内イノシトール3リン酸濃度は0.75%のハロセンと保温後5分で最高濃度に達し,それ以降減少傾向を示した。 5. 肝細胞内イノシトール3リン酸のハロタンによる影響 肝細胞内イノシトール3リン酸はハロセン1.5%までハロセン濃度と共に増加したが3.0%では増加しなかった。 6. 肝細胞内イノシトール3リン酸はセボフルラン(気相中濃度0.5%,1.0%,2%,5%)と10分間保温した結果,イノシトール3リン酸濃度への影響はなかった。 本研究により細胞内情報伝達機構がハロセンにより影響を受ける可能性が明らかになった。しかしその増加による肝障害の危険性を本実験から結論することはできなかった。
|