研究概要 |
スナネズミ一過性前脳虚血後の脳低温処置モデルで,海馬CA1ニューロン保護効果とミクログリアの増殖・活性化の経時変化を分析した。無処置群では,6時間後から海馬CA1放線状層にramified型ミクログリアの増殖が始まり,ニューロンがまだ正常な形態を示す2日後にはCA1領域全体に広がった。増殖のピークは4日後で,rod型,amoeboid型への形態変化と錐体細胞層内への移行が観察された。短時間脳低温処置群(虚血1〜6時間,32℃)では,無処置群より増殖のピークが数日遅れる経時変化を示し,虚血7日後に残存した大部分のニューロンが虚血30日後には脱落した。長時間脳低温処置群(虚血1〜24時間,32℃)では,一過性のわずかなミクログリアの増殖にとどまり,ニューロン死が抑止された。このことより,慢性期の低温のニューロン保護機序としてミクログリアの増殖・活性化の抑制が関与している可能性が示唆された。 次に,一過性のニューロン保護効果しか認められない短時間脳低温処置とミクログリアの増殖抑制作用のあるプロぺントフィリン(PPF)の併用により,慢性期の海馬CA1ニューロンの脱落が抑止できるかどうか検討した。無処置群,短時間脳低温処置群,PPF単独投与群(1日1回10mg/kg腹腔内投与,14日連続),短時間脳低温処置・PPF併用投与群(PPFの初回投与は虚血1日後)の各群の虚血30日後の海馬CA1残存ニューロン数の割合は,それぞれ約6%,4%,15%,60%で,短時間脳低温処置・PPF併用投与群で有意なニューロン保護効果が認められた。 また,ラット1時間の中大脳動脈閉塞モデルでも,虚血再灌流2,4,6時間後から33℃,24時間の脳低温処置により24時間後の大脳皮質梗塞体積が有意に減少し,脳低温処置のニューロン保護効果が確認された。
|