1. 目的:手術侵襲時のサイトカインの動態が、手術侵襲の程度や麻酔法の差異によりどのように変化するかを末梢血単核球のサイトカイン・mRNA発現量を測定して解析する。また、腹膜炎など重症ショック時の末梢血単核球のサイトカイン・mRNAの変化を調べる。 2. 方法 真焼結単核球によりサンプルmRNAを抽出して、内部コントロールとともにRT-PRCを行い、サンプル中の各サイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNF-α)のmRCR発現量をコピー数として定量的に評価した。採決は執刀前、執刀後1時間、執刀後2時間の3点で行った。手術侵襲の程度は開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術との比較で、麻酔法に関しては全身麻酔群と硬膜外麻酔併用全身麻酔群との比較で行った。 3. 結果 (1) 開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術との比較 開腹手術群が腹腔鏡下胆嚢摘出術群により有意にIL-1β、TNF-αの発現量が多かった。 (2) 全身麻酔群と硬膜外麻酔併用全身麻酔群との比較 全身麻酔群が硬膜外麻酔併用全身麻酔群よりIL-1β、TNF-αの発現量が多かったが有意ではなかった。 (3) 腹膜炎患者での変化 腹膜炎患者ではIL-1β、TNF-αの発現量が多い傾向が見受けられた。 (4) 上の(1)〜(3)においていずれもIL-1αは発現がみられなかった。 4. 結論 手術侵襲時の末梢血単核球のサイトカイン・mRNA発現量は、手術侵襲の程度が大きい程増加する傾向にある。即ち、手術創の大きさや外傷の程度に有意に関係があるといえる。硬膜外麻酔は全身麻酔と比較して、サイトカイン・mRNAの発現量を抑える傾向にはあるが有意ではなかった。
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