研究概要 |
敗血症性ショックは、過剰に放出された一酸化窒素(nitric monoxide;NO)による異常な血管拡張以外にも種々の病態があるものと考えられ、我々は、血管内皮からNO以外に強い血管拡張作用を有する血管内皮依存性過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizingfactor;EDHF)がヒトにおいても放出され(Nakashimaet al,1993)、このEDHFが,NOと比較し、臓器血流維持により重要な役割を果たすと考えられる所見を得た(Urakamiet al,1997)。 そこで、ラットの敗血症ショックモデル作成のため、予備実験として生後12〜16週の雄のwistar ratにE.coli由来エンドトキシン(LPS)10mg/kgを腹腔内投与したところ、血圧低下および血中のTNF-αおよびIL-6は上昇した。従って、本研究の本年度の目的の1つである敗血症ショックモデルの作成は、以後この方法によることとした。 LPS投与後約24〜48時間のラットを、ペントバルビタール麻酔下に腸管膜動脈を摘出し、アセチルコリン(10^<-9>〜10^<-6>M)による弛緩反応をコントロール群(生理食塩水腹腔内投与)と比較する前段階として、リング標本をphenylephrine(3x10^<-7>M)により収縮させたところ、LPS投与群ではphenylephrineによる収縮反応が有意に抑制されていた。LPS投与群におけるこのphenylephrineによる収縮の抑制はNO合成阻害薬であるnitro-L-arginine(10-4M)の存在下でも完全に回復しないことから、NO以外の血管拡張物質の存在が示唆され、来年度以降さらなる検討が必要であると思われた。
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