敗血症性ショックにおける血管拡張の病態を明らかにする目的で、平成9年度において、雄のウィスターラットに腹腔内へのエンドトキシン(LPS)の腹腔内投与により敗血症性ショックモデルを作成した。 今年度は、この敗血症性ショックモデルをおいて過剰に放出された一酸化窒素(nitric monoxide:NO)の存在をを免疫生化学的手法により明らかにする目的で、ペントバルビタール麻酔下に、LPS投与後約6時間のラットの大動脈、腸管膜動脈、頚動脈および腎動脈を摘出し、アセチルコリン10^<-6>M投与時および対照群におけるcyclic GMPの濃度を測定した。その結果、種々の血管のうち特に大動脈においてcyclic GMPが有意に増加していることが明らかになった。さらに、LPS投与により誘導された誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の存在を各血管ごとに、ウエスタンブロット法により明らかにした。この結果は、平成11年5月に開催される日本麻酔学会において発表する予定である。 また、今年度は、敗血症性ショックモデルから摘出された各血管のリング標本を作製し、エンドトキシンショック時におけるNOおよび血管内皮依存性過分極因子(EDHF)その他の血管拡張物質の存在を知るための予備実験としてフェニレフリンによる収縮反応およびアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応について検討を行った。各血管においてLPS投与群では収縮および弛緩反応は有意に抑制されていた。次年度は、この等尺性張力から得られた結果をもとに、さらに詳細な検討を加えると共に、血管平滑筋細胞膜の電気生理学的研究を行うことで、敗血症性ショックにおけるNOおよびそれ以外の血管拡張物質を明らかにする必要があると思われた。
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