研究概要 |
前年度に引き続き、ラット敗血症モデルを作成し、大動脈、腎動脈、内頚動脈および腸管膜動脈における一酸化窒素(NO)と血管内皮依存性過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor;EDHF)の及ぼす影響について検討した。前年度に明らかとなった誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)蛋白の定量結果と血管平滑筋内のcyclicGMP値との血管の部位による解離は本年度の追試によっても確認され、敗血症ショックにおいてNO以外の血管拡張物質の作用が示唆された。 今年度は、さらにNO以外の血管拡張物質の中でEDHFに注目し、eNOS knock-Outマウスを用い等尺性張力測定および電気生理学手法を用いその本体について検討した。アセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応および過分極反応はカタラーゼにより有意に抑制されたことから、eNOS knock-outマウスにおけるEDHFはhydrogen peroxide(H2O2)である可能性が示唆された(7Journal of Clinical Investigation,2000)。しかし、ラット腸間膜動脈においては、アセチルコリンによる内皮依存性弛緩および過分極反応はカタラーゼによってほとんど抑制されなかった。したがった、ラット腸間膜において、H2O2がEDHFである可能性は低いことが明らかになった。 また、文献的にEDHFの可能性が示唆されている11,12-epoxyeicosatetraenoic acid(EET)の抗ショック作用について敗血性ショックマウスで検討を行ったが対照群と生存率に関し有意差を認めなかった。
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