1.正常雑種成犬を用いて体外式肺補助(ECLA)下に、生体肺を4時間にわたって液体で完全に充填して生体に及ぼす影響を評価した。動物を麻酔後、人工換気を停止し、静脈-動脈バイパスECLA下に両側肺内を液体で充填するとPaO2は著明に低下したが、液体排出後、通常の人工呼吸を開始すると、PaO2は急激に上昇し、生体肺のガス交換能は液体充填後にも保たれていた。胸部レントゲン写真上も排水後の肺の拡張は良く、液体の残留や無気肺などを思わせる所見はなかった。静肺コンプライアンスは、ECLA施行前と比較して4時間の液体充填後にもほとんど変化はなく、4時間の肺内液体充填によって肺間質の浮腫や肺胞内への液体貯留などはほとんどおこらなかったと考えられる。液体充填によって、肺出血などの合併症をおこしたものはなかった。充填易排出後、全てのイヌがECLAを離脱して通常の人工呼吸へと移行でき、途中で死亡したイヌはなかった。また、殆どのイヌが機械的人工換気を離脱して自発呼吸へ移行できた。 2.実際の急性肺傷害に対する効果に関しては、パラコート投与により急性肺傷害モデルの作製を行っている段階である。今後、急性肺傷害発症初期のモデルに対して肺内液体充填を施行し、その効果を検討する予定である。
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