研究概要 |
我々は、ラット神経因性疼痛モデルを使った実験で神経栄養因子のひとつであるNGFを与えることによって疼痛行動が改善することを観察した。そこで、NGFと神経因性疼痛の関係を神経再生という観点から明らかにする必要があると考え、NGFに対する高親和性受容体(TrkA)の発現について調べた。〔方法〕雄で生後5週以降のSprague-Dawleyを用い、ラット神経因性疼痛モデルを作製した。ペントバルビタール45mg/kgを腹腔内投与した後、大腿中央部で大腿二頭筋を分け、右坐骨神経を露出し、周囲組織を丁寧に剥離し、3つに分枝する前のところを結紮した。結紮にはクロミック縫合糸を用い、1mm間隔で4カ所を血流が止まらない程度に緩く結紮した。結紮前、結紮後1,2,4週目に熱刺激と触刺激に対する侵害域値を測定し、神経因性疼痛モデルができていることを確認した。熱刺激に対する侵害域値は、UGO BASILE社製プランターテストを用い、触刺激に対する侵害域値は、Von Frey繊維を用いて測定した。結紮後1,2,4週目のラットから右坐骨神経結紮部と後根神経節の摘出標本を作製した。ペントバルビタールで深麻酔し、血液を洗い流した後、4%パラホルムアルデヒドを還流して固定した。坐骨神経結紮部と後根神経節(第5,6腰椎レベル)を取り出し、神経走行に沿って厚さ10μmの凍結切片を10枚ずつ作製し、スライドガラスに貼付した。この標本に存在すると考えられるTrkAを免疫組織化学染色法で観察した。前処理した後、サンタクルス社製のTrkAに対するポリクロナール抗体(ウサギ)と反応させた。これをアジビン標識2次抗体(ヤギ)、ビオチン標識西洋ワサビペルオキシダーゼと反応させ、過酸化水素水とジアミノベンジディンで発色された。脱水、透徹、封入した後、光学顕微鏡を用い、観察した。〔結果〕今回の実験では、坐骨神経結紮部と後根神経節にTrkAを見いだせなかった。
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