淡水棲かたつむりLymnaea stagnalisの、呼吸の中枢パターン発生器の3つのニューロンがどのように神経系の中で調節されているかを調べた。末梢神経を持たない分離脳標本に低酸素生理食塩液を還流させると呼吸活動は変化をきたさないが、末梢神経をもったsemi-intact標本では、呼吸の活動は増加する。 1、 中枢パターン発生器のなかの呼吸を開始させる役割を持つRPeDlを分離培養し、低酸素生理食塩液を還流して反応があるか調べた。しかし分離したRPeDlのみでは低酸素刺激に対して、静止膜電位や活動電位の変化をきたすことはなかった。RPeD1自体は低酸素に対する化学受容をもつことはなく、末梢の組織に化学受容が存在すると考えられた。 2、 末梢組織の化学受容体である可能性のある細胞の分離を試みた。pneumostomeの直下に存在する末梢神経節であるosphradium神経節のニューロンである。神経節を取りだし酵素を用いて個々の細胞の分離を試みたが、現在のところ成功していない。そのため神経節より直接ニューロンの活動電位をひろおうと試みている。 3、 呼吸に対する二酸化炭素の影響を調べるために、5%までの濃度の二酸化炭素と空気を含んだ生理食塩液を分離脳標本、semi-intact標本に還流したが、ともに呼吸活動の抑制を認めた。二酸化炭素を含んだ生理食塩液はpHの低下をきたしていたため、pHの低い生理食塩液を作製し影響を調べたが、同様に呼吸活動の抑制を認めた。呼吸活動の抑制は二酸化炭素によるものか、低pHによるものかは明らかにはならなかった。
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