研究概要 |
近赤外分光法の肝酸素化状態モニタリング応用への可能性を確かめるとともに、経食道的アプローチ法の可能性も検討した。〈方法〉ブタの門脈、総肝動脈にドップラー血流量計を装着し、門脈、肝静脈に採血用のカテーテルを挿入した。肝表面には測定装置用プローブを装着した。また、経食道的アプローチ法の可能性を検討するため、特製プローブを作成し経食道的に胃内へ挿入し肝酸素化状態測定を試みた。近赤外分光法は、4波長(700,730,750,805nm)解析より、酸素化型ヘモグロビン(HbO2)、脱酸素化型ヘモグロビン(Hb)、チトクロームオキシダーゼ(cyt.ox.)の酸化-還元状態の相対的な変化を測定した。〈結果および考察〉肝臓表面に装着した近赤外分光法測定では、(1)急性出血時にはHbO2と肝静脈血酸素飽和度との間に有意な相関関係がみられた。(2)ノルアドレナリン投与による肝血流低下時には、HbO2の低下およびcyt.ox.の還元が認められた。(3)肝静脈内にバルーンを挿入し血流を遮断すると、肝鬱血と思われる総Hb(HbO2+Hb)の上昇、cyt.ox.の還元がみられた。(4)エンドトキシン投与では肝血流の低下がみられ、cyt.ox.も還元された。以上の結果より、近赤外分光法により肝組織の酸素化状態を正確に検出できることが確認できた。次に、経食道的に胃内に近赤外分光装置用の特製プローブを挿入し測定したところ、(1)肝臓と胃の間に遮光用黒シートを挿入すると、その前後での吸光度に大きな変化が検出されることより、近赤外光は胃内からでも容易に肝臓組織へ到達するものと考えられた。(2)門脈遮断により、肝酸素化状態の悪化を胃内の近赤外分光測定プローブにより検出できた。以上の結果より、近赤外分光法の経食道的なアプローチ法により無侵襲的かつ連続的な肝酸素化状態モニタリング法の可能性が示唆された。
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