研究概要 |
近赤外分光法の肝酸素化状態モニタリング応用への可能性を確かめるとともに、経食道的アプローチ法の可能性も検討した。〈方法〉ブタの門脈、総肝動脈にドップラー血流量計を装着し、門脈、肝静脈に採血用のカテーテルを挿入した。I群では近赤外分光測定用プローブは肝表面に装着され、II群では経食道用に作成した近赤外分光用特製プローブが胃内へ挿入された。近赤外分光法は、4波長(700,730,750,805nm)解析より、酸素化型ヘモグロビン(oxy-Hb)、脱酸素化型ヘモグロビン(deoxy-Hb)、チトクロームオキシダーゼ(cyt.ox.)の酸化ー還元状態の相対的な変化を測定した。〈結果および考察〉I群において、(1)急性出血時にはoxy-Hbと肝静脈血酸素飽和度との間に有意な相関関係(r=0.97,p<0.01)がみられた。(2)ノルアドレナリン投与により、肝血流及び総Hb(oxy-Hb+deoxy-Hb)は有意に低下し、cyt.ox.は還元化を示した。(3)肝静脈内にバルーンを挿入し血流を遮断すると、肝鬱血による総Hb(HbO2+Hb)の上昇とcyt.ox.の還元がみられた。(4)エンドトキシン投与により3段階の肝血流の変化がみられ、第2段階では肝動脈血流の増加(緩衝反応)と伴にoxy-Hbとdeoxy-Hbが増加し、第3段階では緩衝反応の消失とcyt.ox.の還元がみられた。以上の結果より、cyt.ox.の酸化ー還元状態により肝組織の酸素化状態を正確に検出できることが確認できた。II群では、(1)肝臓と胃の間に遮光用黒シートを挿入すると、その前後での吸光度に大きな変化が検出された。(2)門脈遮断により、cyt.ox.の還元が胃内の近赤外分光測定プローブにより検出できた。以上の結果より、近赤外光は胃内からでも容易に肝臓組織へ到達することが確認でき、さらに、近赤外分光法の経食道的なアプローチ法で肝酸素化状態モニタリングが可能であることが示唆された。
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