当研究施設ではこれまで麻酔・虚血時の臓器障害の病因を、生化学的、病理学的手法を用いて検討してきた。現在、ショック時における血管平滑筋に及ぼす薬物、環境の作用機序に関してヒト血管標本による張力測定法を用いて種々の報告を行っている。 現在、生体内ペプチドホルモンとNitric Oxideの産生との関連性を検討中であり、ペプチドホルモンの作用機序および治療薬としての可能性を検討している。 当研究施設では敗血症ショック時の血管反応性低下を観察できるヒト血管を用いた実験系を作成し、ショック時のヒト血管の反応性について報告した。本実験結果において、バソプレッシンがエンドトキシンショック時に生じる血管弛緩に対して改善効果をもたらすことが明らかにされた。バソプレッシンはそれ自体で血管収縮作用を有するが、収縮が発生する以前の低濃度でノルアドレナリンの収縮を増強した。ショック時、バソプレッシンやアルドステロン等のペプチドホルモンが増加し昇圧反応に関与することが知られているが、この反応は、バソプレッシン自体による血管収縮よりも、生体内カテコラミンの作用増強が主因と考えられる。これらの結果は、ショック時の昇圧薬としてのバソプレッシンの有効性を示唆する所見であり、日本麻酔学会総会(98'4月)にて報告をおこなう予定である。 今後の課題として、バソプレッシンのブタ冠動脈および肝血流に及ぼす影を検討する予定である。
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