対象は雑種成犬を用い、自己血採血と代用血漿輸液を同量で行う血液希釈モデルを作製し、過換気による脳諸量に及ぼす影響を検討した。血液希釈状態は脳血流量増加に伴う脳圧上昇が危惧されるが、過換気により血液希釈状態であっても脳圧は低下した。しかし、血液希釈状態を作製していない群と比較すると脳圧の低下は少なく、術前より脳圧が低下している症例での希釈式自己血輸血は慎重に行うほうがよい。脳外科手術に低血圧麻酔を併用すると出血量の軽減ばかりでなく手術を容易にさせる。血液希釈状態での低血圧麻酔薬が脳諸量に及ぼす影響を検討した。中でも、日常の臨床で最も使用が多いセボフルランとイソフルランによる深麻酔によって得られる低血圧麻酔が脳諸量に及ぼす影響を検討した。その結果、血液希釈状態でのセボフルランは低血圧中にもかかわらず、脳圧、脳血流は低下せず、脳酸素分圧は低下した。これに対し、イソフルランは低血圧中には脳圧が低下し、脳組織酸素分圧が保たれた。この結果、希釈式自己血輸血に麻酔薬を用いて低血圧麻酔を行う時には、セボフルランよりイソフルランのほうが有利であると結論付けられた。
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