研究概要 |
本研究の目的は,生体顕微鏡を用いて網膜微小血管の虚血後再潅流時の微小循環動態を観察し,低濃度リドカインによる白血球-内皮細胞間相互作用の抑制作用を微小血管,赤血球,白血球動態の解析により明らかにすることであった。平成9年度に於いて15匹の家兎を対象として研究を行った。白血球および赤血球を可視化するためにそれぞれロダミン6Gの静脈内および赤血球をFITC (fluorescein isothiocyanate)にて標識し,これを静脈内に投与した。しかしながらわれわれの微小循環観察システムでは家兎網膜微小血管やその中を流れる白血球,赤血球の画像をえることができなかった。その原因として,1)対物レンズと網膜間の距離がレンズの焦点距離より長い,2)水晶体と硝子体との間での散乱,3)赤血球および白血球の蛍光物質標識が不十分である,4)白色動物では網膜微小血管と周囲との色素のコントラストが不良であることの可能性が考えられた。その原因を解決するため以下の研究を行った。まず3)については,家兎眼球網膜の微小血管を観察したところ,われわれの微小循環観察システムで鮮明な画像がえられた。しがたって,その可能性は否定された。次いで,1)に関しては,焦点距離の短い対物レンズを購入して,網膜の観察を試みるとともに,眼球の小さいハムスター20匹,ラット10匹を用いて網膜微小血管の観察を試みた。しかしいずれも画像が得られず,焦点距離が画像の得られない原因でないことが明らかになった。4)の可能性については有色ウサギを用いて観察を行うことにより解決される。したがって,原因としては2)の可能性が最も高いと推測された。これには散乱光を除外できるレーザを用いた光学システム(SLOなど)が必要と考えられた。したがって,来年度においては現在の微小循環観察システムで観察可能な体表表面の微小血管を観察することと,あるいはSLOを用いて網膜微小血管を観察することを考慮している。
|