本研究の目的は神経筋伝達機能分析装置の原理の違い、すなわち力測定、加速度測定、筋電図測定により得られた指標に臨床的な意味の相違がないかを検討することである。これを実施するため、力測定と筋電図、加速度測定と筋電図をそれぞれ同時に対象の同一部位で測定を行った。対象はコンセンサスを得たASAリスクの判定基準I〜IIの定例手術患者を選んだ。麻酔はセボフルランまたはイソフルランで施行し、筋弛緩薬はベクロニウムを用いた。同側の手の栂指に既有のマイオグラフ2000^<TM>のトランスジューサを、栂指内転筋には本研究費で購入した筋電図式分析装置(デーテックスAS-3およびM-NMT^<TM>)を装置し力の変化と筋電図の変化を同時測定した。一方、加速度の変化と筋電図の変化の測定には同様に加速度トランスデューサと筋電図式分析装置で同一部位、同一時相で測定した。指標の比較は四連刺激に対する最初の反応高(T_1)と四連反応比(TOF比)を比較した。その結果、前者の比較では力による値(X)、筋電図による値(Y)の関係は、T_1ではY=0.880X+4.972、γ^2=0.952、n=245、TOF比はY=0.923X+4.885、γ^2=0.942、n=314であった。次に加速度による値(X)、筋電図による値(Y)の関係は、T_1ではY=0.861X+7.584、γ^2=0.940、n=253でTOF比はY=0.882X+1.05、γ^2=0.903、n=337でありいずれも高い正の直線的相関関係を見出すことができた。 以上、本研究ではデーターの高い信頼性、臨床的に操作が簡便であることから筋電図式神経筋伝達機能分析装置は外科的筋弛緩レベルでの筋弛緩モニターとして臨床的有用性が高いとの結論を得た。
|