研究概要 |
1.分子生物学的形態実験 In situ hybridizationを用いた正常ラットの仙髄排尿中におけるグルタミン酸受容体サブタイプのmRNAの発現に関する研究により、副交感神経核とOnuf核ではAMPA型グルタミン酸受容体のサブタイプ(GluRA〜D)とNMDA型グルタミン酸受容体サブタイプ(NR1,NR2A〜D)の発現が異なることが判明し、このグルタミン酸受容体サブタイプの発現の相違が副交感神経核とOnuf核の機能的相違を反映していることが示唆された。 2.電気生理学的実験 (1)電気生理学的手法を用いた排尿の求心路に関する実験では、脊髄クモ膜下に投与されたNMDA型およびAMPA型受容体拮抗薬は容量依存性に脊髄内の求心路を抑制し、両者は相乗的に作用することが判明した。 (2)セトロニン受容体のうち、5-HT_<1A>受容体拮抗薬は排尿の求心路に対しては抑制効果を持たず、遠心路に対してのみ作用することが判明した。 (3)代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)のサブタイプ(mGluR I〜V)の内、mGluR I,IIの拮抗薬であるα-methyl-4-carboxyphenylglycine(MCPG)は静脈内投与(0.1-5mg/kg) 、脊髄クモ膜下投与(1-5μg) のいずれによっても膀胱収縮には全く影響を与えなかった。mGluR II,III,V,Iの刺激薬(II,III>>V>I)であるtrans-1-amino-1,3 cyclopentanedicarboxylic acid(trans-ACPD)は静脈内投与(1-10mg/kg)では排尿反射に影響を及ぼさなかったが、脊髄クモ膜下投与(10μg)では膀胱収縮の抑制が認められた。このようにtrans-ACPDは排尿反射を抑制することが確認され、また作用部位の検討により排尿神経路のうち少なくとも下行性神経路の仙髄レベルに作用することが判明した。
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