Wistarラット雄・雌にシュウ酸前駆物質(エチレングリコール(E-G)、グリコール酸、グリシン)を強制投与し、投与量と尿中シュウ酸濃度の関係を検討した。雄では、E-G、グリコール酸とも投与量依存性に尿中シュウ酸濃度は増加したが雌では軽度に増加していた。グリシンについては、雄、雌ともほとんど変化しなかった。次に水道水摂取下の通常飼育状態で、ラットの性ホルモン環境を変化させ、尿中シュウ酸排泄量とGlycolate oxidase(GO)、Serine pyruvate aminotransferase(SPT)活性を測定した。雄では、GO活性は除睾群および除睾+エストラジオール(E2)投与群で低下しており、除睾+テストステロン補充群でコンロール値近くに回復していた。また、非除睾ラットのE2投与群では投与期間とともに徐々に活性は低下し、投与中止後コントロールレベルに回復した。一方雌では、GO活性はコントロール群で雄より低値であった。卵巣摘出群、卵摘+テストステロン投与群でコントロールに比し増加していた。SPT活性についてはコントロールで雌が雄より若干高値であったが他の群間に差はなかった。尿中シュウ酸排泄量については雄・雌とも各群間に有為差は見られなかった。E-G負荷状態で、ラット雄、雌について同様の検討を行ったがGO活性は、変化しなかった。しかし、尿中シュウ酸排泄量については、雄はコントロールの2倍に増加していたのに対し、雌では増加の程度は軽かった。なお、SPT活比については変化しなかった。以上の結果からラットにはグリコール酸からシュウ酸への代謝に性差が存在し、GO活性は主にテストステロンにより促進されていることが判明し、このことがラット結石モデルにおいて、雌がE-Gの毒性に抵抗性であり、結石形成が困難な理由の一つと考えられた。
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