左尿管結紮による一側水腎症を幼若rat(体重90-100g)に作成し、健腎側の腎障害の進展を7ヶ月間観察したところ、コントロール群や左腎摘群に比べ、4ヶ月以降有意に水腎群健腎の硬化糸球体が多いことが判明した。アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤投与により、糸球体硬化は顕著に抑制され、糸球体障害の進展にはrenin-angiotensin系が関与していることが推測された。そこで、renin産生を検討したところ、水腎群では腎摘群やコントロール群に比較して、有意に血漿renin活性が低値であった。腎皮質のrenin産生能は、水腎では間質が線維化し正常尿細管がほとんどないにも関わらず、糸球体は比較的正常に保たれており、これに近接する傍糸球体装置や小動脈でのrenin産生の顕著な増加が観察された。これに対して、水腎群健腎でのrenin産生はコントロール群や腎摘群より有意に低下していた。このようなrenin産生の変化にはangiotensinIIの関与が考えられ、次に血漿angiotensinIIを測定したが、各群で有意の差はなかった。ACEの腎皮質での発現をみると、水腎群の水腎・健腎双方で発見が有意に増加していた。現在腎におけるangiotensinogenの生成についてmRNA及び蛋白を検討中である。今後問質障害の進展についても検討する予定である。 細胞浸潤及び接着分子に関しては、現在β chemokine(RANTES、MIP-1α)、selectin(P-及びE-selectin)、CD40-CD40Lを中心に、まず水腎でのT cell浸潤に対するこれら接着分子の関与について検討中である。Selectinに関しては、水腎作成数時間後からperitubular arteryに発見の増加が観察されたが、E-selectinは5日後から発現がほとんどみられなくなった。一方、P-selectinは5日以降も小血管に発現が観察された。RANTESはコントロールや水腎群健腎では、小葉間動脈や輸入細動脈に発現が観察された。水腎では、水腎作成後個体差はあるが、12から24時間後に近位尿細管あるいは髄質の尿細管に発現の増加が観察され、3日ないし5日までその発現の増加が観察された。CD40-CD40Lに関しては現在実験途中であり、MIP-1αはRANTESのデータ整理が終わった後、そのligandも含め検討する予定である。
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