尿路閉塞腎の不可逆性の腎障害の進行には、腎間質の線維化が深く関与しているが、この過程の進展機序として、腎組織中のTGF-βを始めとする各種サイトカインやケモカインの活性化や腎間質への炎症性細胞浸潤に伴う細胞外器質の増加と、これを抑制する系の機能低下の両面が考えられる。本研究で線維化を抑制する作用を有するプラスミン系の活性について検討を行い、閉塞腎ではプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)の活性が亢進しており、このためプラスミン系の活性が低下し、線維化の抑制がおこりにくい状況となっていることを動物実験モデルで明らかにした。この結果は、PAI-1の作用を抑制して、プラスミン系を活性化させることにより、閉塞腎における腎間質の線維化がある程度防止できる可能性のあることを示唆するものであり、今後この点についてさらに研究を発展させたい。また、これまで閉塞腎の細胞外器質の産生に関与するTGF-βを始めとする各種サイトカインの発現増加や腎間質への炎症性細胞の浸潤の状況を臨床例を用いて明らかにした。この研究成果は、これまで動物実験モデルで得られた知見が実際の臨床に応用できる可能性を立証したものであり、今後臨床での閉塞性腎障害の治療法の開発とその確立に発展させたい。さらに、閉塞腎での各種サイトカインの発現増加や間質への炎症性細胞浸潤といった反応はアンジオテンシンIIに依存性があるが、閉塞腎でレニン・アンジオテンシン系が長期にわたって活性化されているかどうか明らかではなかった。今回の臨床例の検討では慢性閉塞腎でもレニン・アンジオテンシン系が活性化されていることが明らかとなり、その作用を抑制することが腎障害の進展防止に極めて重要であると考えられた。
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