排尿筋渦活動に由来する尿失禁の成因:cell junction変化による解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671605
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 外山 芳郎 千葉大学, 医学部, 講師 (70009637)
• 研究分担者: 安田 耕作 独協医科大学, 越谷病院, 教授 (70009710) ; 山西 友典 千葉大学, 医学部, 講師 (90220425)
• キーワード: 下部尿路 / 膀胱 / 排尿筋 / 尿路障害 / 加齢 / 微細形態 / 細隙結合

研究概要

平成11年度は高齢者排尿筋における下部尿路機能と電子顕微鏡的形態の関係を調べた。患者は、排尿障害のために手術目的で入院した前立腺肥大症、膀胱頚部硬化症などの器質的下部尿路通過障害患者5例(平均年齢70.6歳)である。また、下部尿路通過障害を認めない患者4例を対照とした。対照症例の内訳は、膀胱癌で膀胱全摘術(2例)、および経尿道的膀胱腫瘍切除術(1例)を施行した症例および腹圧性尿失禁にて膀胱頚部コラーゲン注入療法を施行した膀胱機能の正常な患者(1例)であった。この9例につき、排尿筋過活動の有無、排出時における尿道抵抗の程度、排尿筋の収縮性(収縮不全の有無)などと排尿筋の電子顕微鏡所見、すなわち細隙結合の発達程度および筋細胞の微細形態変化との関連を検討した。また、排尿筋に分布する神経についても、その微細形態の比較を試みた。
対照群では排尿筋細胞の細胞結合に異常は見られなかった。下部尿路通過障害症例では3例に過活動膀胱がみられた。そのうち2例に排尿筋の細隙結合の狭小化が見られた。また、細隙結合の出現頻度も対照群に比べると有意に少なかった。排尿筋の他の微細形態には対照群と下部尿路通過障害患者では有意な差は見られなかった。また、3例の下部尿路通過障害症例では排尿筋に分布する副交感神経の神経線維末端の神経・筋接合装置が対照群より発達しており、また、出現頻度も高かった。このことは細隙結合の過形成とあいまって、下部尿路通過障害患者のある症例では副交感性の刺激が排尿筋全体に過剰に伝わることを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] T. Yamanishi et al.: "A randomized, double-blind study of electrical stimulation for urinary incontinence due to detrusor overactivity"Urology. (印刷中).
• [文献書誌] Y. Toyama et al.: "Decapitated and decaudated spermatozoa in man, and pathogenesis based on the ultrastructure"Int. J. Androlol.. (印刷中).
• [文献書誌] T. Yamanishi et al.: "The effectiveness of terazosin, an alpha-blocker, on bladder neck obstruction as assessed by urodynamic hydraulic energy"BJU Int.. 85. 249-253 (2000)
• [文献書誌] K. Yasuda and T. Yamanishi: "Critical evaluation of electro-stimulation for management of female urinary incontinence"Curr. Opin. Obstet. Gynecol.. 11. 503-507 (1999)
• [文献書誌] T. Yamanishi et al.: "Induction of urethral closure and inhibition of bladder contraction by continuous magnetic stimulation"Neurol Urodynam. Neurol. Urodynam.. 18. 505-510 (1999)
• [文献書誌] Y. Toyama et al.: "Histological characterization of defective spermatogenesis in mice lacking the basigin gene"Anat. Histol. Embryol.. 28. 205-213 (1999)