平成11年度は、これまでの3年間の本研究の対象を総括することを主目的とした。最終的に23例の代用膀胱造設術を施行し、6ヶ月以上経過観察できた21例について検討を行った。観察期間は平均34.3ヶ月(6ヶ月〜5年)である。20例が膀胱癌、1例が膀胱結核である。術式は19例が我々が開発した回腸利用代用膀胱形成術(第85回、第87回日本泌尿器科学会総会で発表。ゼネカ薬品ビデオライブラリ-に収録。)、1例がilndianaPatch法、1例がLeBag法である。3例が癌死、4例が癌有り生存、13例が癌なし生存である。結果は静脈性腎孟尿管造影、Computedtomographyで水腎症を認めるものはない。膀胱尿管逆流(VUR)検査は検査施行13例中、3例はgrade1〜2のVURを認めた。ウロダイナミックス検査では、膀胱内圧測定を行った20例で不随意収縮波を認めたものは4例あったが、術後1年以上経過すると代用膀胱の内圧は安定し、不随意収縮波の消失などが確認された。術後1年以上経過後の平均の初発尿意は200ml、最大尿意は350mlであった。同様に尿流測定では、平均尿流率は6.0ml/sec、最大尿流率は16.0ml/secであった。尿道閉鎖圧は平均20mlであった。MRIではパウチがいわゆるpouchcele状態のものは無かった。1例のみが夜間パットをしようとしている。自己導尿に移行した症例はない。5年以上経過した例でも著変なく安定した膀胱内圧、尿道閉鎖圧を確認できている。性機能が保たれている若年者では、術前に近い定期的な性交渉が続けられている。平成11年度には女子の転移を有する膀胱癌患者の代用膀胱手術のビデオを作製し、ゼネカ薬品ビデオライブラリ-に追加収録した。平成12年4月の第88回日本泌尿器科学会で本研究の臨床的検討を報告し、平成12年7月の第27回尿路悪性腫瘍研究会でQOLについて報告する予定である。
|