研究概要 |
本年度は前年度に登録し、α_<1a>-アドレナリン受容体の多形性を決定した前立腺肥大症患者の治療効果を見るべく経過観察を行うとともに、その前立腺組織の組織型を観察した。 1.前立腺肥大症患者について、臨床症状(IPSS)や前立腺の大きさその他の因子をきめる。 2.治療前の採血にて、血液生化学、前立腺特異抗原、テストステロン等の測定をおこなう。 3.α_<1a>-アドレナリン受容体の多形性を調べる。(患者末梢血よりDNAを抽出し、適切なプライマーを用いてα_<1a>-アドレナリン受容体遺伝子の1417-1918;502-bpを増幅し、制限酵素;PstIで処理後の泳動バンドで多形性をみる。 4.各種α_<1a>-アドレナリン受容体阻害剤にて一定期間治療し、治療前の検査項目について治療効果判定を行う。 5.各多形性での血液生化学像の変化の有無並びに治療効果を判定する。 6.前立腺切除を行った症例で前立腺組織を検鏡し、その組織型を検討する。 我々の今回の研究では、α_<1a>-アドレナリン受容体の多形性(492番目のアミノ酸がアルギニンからシスチンに変化)は、欧米人では約ほぼ43%がシスチンのホモタイプであり、46%がアルギニンとシスチンのヘテロタイプである(Hoehe et al.,1992)のに対して、日本人では157名中123名(78%)がアルギニンのホモタイプであり、33名(21%)がアルギニンとシスチンのヘテロタイプであった。またシスチンのホモタイプはわずか1名(1%以下)であった。アルギニンのホモタイプは、アルギニンのヘテロタイプ(シスチンのホモタイプも含む)に比べて血中トリグリセライドが低い傾向にあった(141±76vs168±113;p=0.18)。しかし、血中のコレステロール、PSAやテストステロンとの相関は極めて低かった。臨床症状や治療効果は特に両者で差はなかったが、日本人に多いアルギニンのホモタイプではfibromusclar typeよりもadenomatous typeが多い印象を受けた。
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