研究概要 |
対象は、膀胱癌と診断され内視鏡的腫瘍切除術を施行した20例(移行上皮癌、grade2,15例;grade3,5例)。治療前に採取した尿中剥離細胞を用いてfluorescence in-situ hybridization (FISH)並びにmicrosatellite PCR法による染色体異常の解析を行い、通常の尿細胞診による腫瘍細胞検出能と比較検討した。FISH法は、第7,8,9染色体セントロメア プローブを用い、microsatellite PCR法は、これまで膀胱癌で有意なallelic imbalance (AI)が報告されている第9染色体短腕並びに長腕領域の6対のpolymorphic primersを使用した。 その結果、17例(85%)で一回の尿採取で両法による解析が可能な剥離細胞数が得られた。FISH法にて少なくとも1つの染色体の数的異常を検出したものは16例(80%)であった。第7,8染色体数の増加(trisomy,tertasomy,hypertetrasomy)並びに第9染色体の欠失(monosomy)が多く見られた。microsatellite PCR法にて少なくとも1箇所でAIあるいはmicrosatellite instabilityが検出されたものは15例(75%)であった。これに対して尿細胞診陽性(class 3以上)は13例(65%)と両法と比較して少なかった。さらに両法のいずれかで異常を検出し得たものは18例(90%)であった。 以上より、FISH並びにmicrosatellite PCR法を用いた尿中剥離細胞における染色体異常の解析は、通常の尿細胞診と比較して膀胱癌診断の感受性が高いことが示唆された。さらに対象数を増やし統計学的解析を加える予定である。また平成10年度は、内視鏡的に再発を認めない治療後膀胱癌症例において、両法により再発予測が可能であるかをprospectiveに検討する予定である。
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