勃起の消退を起こすとされる交感神経(下腹神経ならびに腰仙部交感神経幹)についてその形態、機能、再建を勃起消退および射精の両面から検討した。 I. 陰茎勃起の消退 1).勃起消退を支配する交感神経の同定と同神経切断による勃起消退の変化:勃起の消退は下腹神経で認められ、腰仙部交感神経幹および精巣神経では確認されなかった。両側下腹神経部分切除犬でも全交換神経経路部分切除犬でも、自然観察で持続勃起などの勃起消退障害は認められなかった。また用手的陰茎刺激にて各犬とも完全勃起が起こったが、陰茎刺激を中断しても持続勃起とはならず、数分以上に非勃起状態に復した。この結果は陰茎勃起の消退は中枢からの交感神経経路が遮断されても大きな影響は受けないことを示している。2).代償性: 両側下腹神経切断後の腰仙部交感神経幹の刺激では明らかな勃起消退に対する代償性は確認されなかった。3).大内臓神経一副腎髄質系(内分泌)の勃起消退に対する反応: 大内臓神経の刺激でカテコールアミンの分泌およびこれによる骨盤神経誘発性勃起が抑制される知見が得られた。4).勃起を惹起する骨盤神経の再建の検討: 切断した骨盤神経の縫合により陰茎海綿体への機能が温存され瑠知見を得るとともに骨盤神経の間に下腹神経の一部を挿入しても再建可能である結果を得た。 II. 下腹神経の形態、機能および再建 1).下腹神経経由して射精を支配している交感神経は1.2.3の腰内臓神経すなわち脊髄の1.1.2に由来していることを示す知見を得た。2).精路に至る主交感神経経路および代償経路のいずれにも自律神経の分化が進行中であることを示す知見を得た。3).下腹神経は切断されても縫合することにより、その機能が温存されることおよび同神経の持つ交叉性のメカニズムも温存されることが示された。
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