研究概要 |
背景: 一酸化窒素Nitrate Oxide(NO)は細胞内でL-arginineをL-citrullineに代謝する際に生じ、この反応はNO syntase(NOS)によりcatalyzeされる。NOSは抗腫瘍活性と腫瘍進展活性の二面性を持ち、いまだその役割には議論が多い。caveolin-1及びcaveolin-3はiNOSの活性を阻害するとした報告がある。今回、我々は、腎細胞癌の進展におけるiNOS及びcaveolin-1、-3の発現とその変化を免疫組織化学及びRT-PCR法により検出し検討を行った。対象・方法: 対象は新潟大学及び関連施設にて腎細胞癌のため腎摘除術を施行された50症例とした。摘除腎標本より5μmの切片を作製後、抗iNOS、抗caveolin-1及びcaveolin-3抗体による免疫組織染色、浸潤リンパ球サブセットの検討を行った。また、腎癌細胞株ACHN,A498,KRCY,KH39,Caki1,Caki2の6株よりRNAを抽出、RT-PCR法により、iNOS及びcaveolin-1、-3の発現を検討した。結果: 免疫組織化学では、iNOSの発現は原発巣では50症例中2例(0.5%)に弱発現、転移巣では5例中1例に弱発現を認めたのみであったが、腫瘍塞栓部では4例中2例(50%)に強発現を認め、原発巣に比し有意差を認めた。 caveolin-1は全ての細胞株で有意差なく認められた一方、caveolin-3の発現は転移性細胞株ACHN及びKRC/Yにおいて明らかな発現の減少を認めた。考察: NOは腫瘍における血管新生因子でもあることから、腫瘍塞栓部ではiNOSが、腎細胞癌の脈管侵襲能獲得と静脈内進展のKey moleculeとなっている可能性が示唆された。また、caveoline-3の減少が腎細胞癌の進展をもたらす可能性が示唆された。
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