研究概要 |
1) 前立腺癌細胞の血行性微小播種の分子診断 前立腺癌細胞の分子マーカーとしてのPSAmRNAに対するPCRを行い,現在、患者のその後の臨床経過を詳細に観察している。 2) ARやestrogen receptor(ER)の発現増強を指標としてのこれらの発現誘導とその機序解明 4種類のヒト前立腺癌細胞株(LNCaP,PC-3,DU-145,TSUPr-l)に分化誘導作用を有する薬剤としてInterferon(IFN),5-azacytidine,all-trans retinoic acid(ATRA)を作用させ,細胞数と各種mRNAの発現についてRT-PCR法を用いて検討した.(1)IFNとATRAについては,増殖抑制効果は認められなかった.(2)5-azacytidineについてはすべての細胞株において濃度依存的に細胞増殖の抑制が認められた。 3) 2)の結果より、これらの分化誘導作用が細胞周期や転写系におけるプロモー夕に関与が示唆された。 細胞周期の制御を視点におき、癌抑制遺伝子であるp16のmRNAは,DU-145で強発現,LNCaPで弱発現を示したが,さらに、5-azacytidineの作用下では,本来発現のないTSUPr-1およびPC-3でも発現の誘導が観察され,これらの細胞株におけるpromoter regionの脱メチル化が示された. 5-azacytidineの曝露すなわちヒト前立腺癌細胞株において各種癌抑制遺伝子の脱メチル化を通して細胞増殖抑制作用を示す可能性が示唆された. 今後は,その他の細胞周期の制御に関わる遺伝子の発現を検討するとともに,増殖および分化の一つのマーカーとされるテロメラーゼ活性を測定し,増殖抑制機構の解明に尽力する予定である.
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