研究概要 |
自然排尿型新膀胱を造設された患者のカルシウム代謝に関する調査 膀胱全摘後に回腸導管や尿管皮膚瘻等の尿路変向を受けた場合は、尿が常に体外に向かって排出される構造になっているため、尿が腸管粘膜と接触する時間が短い、ないしはないためその再吸収は問題にならなかった、しかし自然排尿型新膀胱患者は蓄尿に働くレザーバーが表面積の広い腸管で作成されているため、C1の再吸収により高クロール性代謝性アシドシスに陥る可能性が高い。極く軽度のアシドーシスでも長期に亘れば、カルシウム代謝に障害を起こし腎機能不全・骨粗鬆症を惹起することが報告されている。本年度我々は、右半結腸を用いたcolonic neobladder2例、上行結腸と回腸終末部を用いるileocolonic neobladder8例、S状結腸を用いるsigmoid colonic neobladder23例を対象として、血中電解質定量・動脈血ガス分析・骨代謝のマーカーとして尿中pyridinoline,deoxypyridinoline,N-teminal pyridinolone cross-linked telopeptideと血中type 1 cillagenのpyridinoline cross-linked C terminal telopeptideを測定した。さらに脊密度測定をおこなった。 この結果、新膀胱造設患者は軽度の代謝性アシドーシスを呈していた。高感度の骨代謝のbiomarkerを用いた検討から半数以上の症例で骨塩の吸収障害が認められた。さらに骨密度測定結果は骨密度の低下が認められた。このことは、新膀胱造設患者の長期予後に対して、軽度とはいえアシドーシスの存在が問題となることが明かになった。このことは、腸管を利用した新膀胱の限界を示す結果であった。
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