研究概要 |
(1)自然排尿型新膀胱を造設された患者の排尿に関する長期予後調査 自然排尿型新膀胱を造設され5年以上経過し、局所ないしは遠隔転移再発のない男性患者30例に対して、排尿機能・排尿動態・新膀胱内腫瘍発生率に関して調査をおこなった。新膀胱の種類別には、右半結腸を用いるcolonic neobladder(CN)7例、上行結腸と回腸終末部を用いるileocolonic neobladder(ICN)10例、回腸のみを用いるileal neobladder(IN)10例、S状結腸を用いるsigmoid colonic neobladder(SCN)3例であった。昼間尿失禁率はいずれも10%程度で、4種類の新膀胱間で有意差はなかったが、夜間尿失禁率はINが他より優れていた。これは、INが500ml以上の、容量の大きなコンプライアンスの良いパウチを有するものが多かったためと考えられた。 (2)自然排尿型新膀胱を造設された女性症例の検討 4年以上経過観察されたCN2例、ICN2例、IN4例について排尿動態を調査した。この結果、排尿効率はCNとICNが良く、INはhypercontinentのため清潔簡潔自己導尿を必要とした。この原因は、INは小骨盤内でのパウチの自由度が大きく、新膀胱パウチ底部と新膀胱頚部の成す角度であるneocystourethral angleが小さくなり過ぎるためと考えられた。 (3)自然排尿型新膀胱を造設された患者のカルシウム代謝に関する調査 CN2例、ICN8例、SCN23例を対象として、血中電解質定量・動脈血ガス分析・骨代謝のマーカーとして尿中pyridinoline,deoxypyridinoline,N-teminal pyridinolone cross-linked telopeptideと血中type 1 cillagenのpyridinolinecross-linkedC terminal telopeptideを測定した。さらに脊密度測定をおこなった。 この結果、新膀胱造設患者は軽度の代謝性アシドーシスを呈していた。高感度の骨代謝のbiomarkerを用いた検討から半数以上の症例で骨塩の吸収障害が認められた。さらに骨密度測定結果は骨密度の低下が認められた。このことは、新膀胱造設患者の長期予後に対して、軽度とはいえアシドーシスの存在が問題となることが明かになった。このことは、腸管を利用した新膀胱の限界を示す結果であった。 これらの問題点を解決するには、腸管を利用した新膀胱造設ではなく再tissue engineeringを用いた膀胱の再生に取り組む必要があると考えられた。
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