2歳2カ月の男児のCAPD腹膜炎に対しバンコマイシン(VCM)の点滴静注投与を行い、VCMの血中濃度を測定した。患児は1歳時multicystic dysplastic kidneyによる慢性腎不全のためCAPD導入となった。受信時38℃の発熟およびCAPD排液の混濁を認めたため入院の上VCM20mg/kgの点滴静注を行った。起炎菌は黄色ブドウ球菌でVCM、MlNO、CCLに対する感受性を示した。VCM投与翌日、3日目、6日目のVCM血中濃度はそれぞれ30.9μg/ml、9.15μg/ml、1.9μg/mlであり、排液中cell countは963/mm^3から8/mm^3ヘ滅少、発熟は軽快、細菌培養も陰性化した。しかし入院11日目より腹膜炎が再燃、起炎菌は黄色ブドウ球菌でVCMに対する感受性も認められたがVCMの投与にてcell count所見は改善しないため入院26日目よりMINO20mg/kgの経口投与に変更した。MINOの長期投与は歯牙の着色やエナメル質形成不全といった副作用を来す恐れがあるためCCL200mg/dayの内服に変更したところcell count所見は改善し細菌培養も陰性化した。しかしCCLの内服を中止すると腹膜炎が再発し、検出される黄色ブドウ球菌はVCMに対する感受性はあるものの、VCMの投与では腹膜炎は改善せず、再びCCLの内服に変更したところ、cell count所見は改善し、細菌培養も陰性化した。2回目の腹膜炎再燃時には出口部感染も認められたため、入院66日目にテンコフカテーテルを抜去、再留置を行った。その後CCL内服中止後も腹膜炎の再発を認めなかったため軽快退院となった。
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