研究概要 |
1,研究の目的:長期透析患者において,透析期間が延長するとともに,後天性腎嚢胞及び多嚢胞化萎縮腎が発生し,さらに高い頻度で腎細胞癌が発生するという,臨床的な大きな問題点が明らかになっている。現在多嚢胞化萎縮腎及び腎細胞癌の発生機序は腎が萎縮するにともない,尿細管上皮が強い増殖能を持つようになるためと思われているが、その適切な動物モデルは作成されていない。そこで我々は,腫瘍発生を伴う多嚢胞化萎縮腎モデルを作成するとともに,増殖因子の検討を通じて、腎の嚢胞化及び,腫瘍の発生に関していかに増殖因子が働いているか明らかにし,さらに腎細胞癌の発生機序に関する検討を行う予定である。 2,本年度の研究実施計画 (1)腫瘍発生を伴う多嚢胞化萎縮腎モデルの作成 Okawa H.and Doi K.:Neoplastic lesions in stretozoticin-treated rats.Exp.anim.32:77-84,1983.によれば60mg/kgのstreptozotocin(SZ)を5週齢時のSD系のラット16匹に単回静注を行ったところ,22ヵ月を経過した後、病理学的検索により,8匹に腎腫瘍が生じたとしている。一方,小野慶治,王 幸則:透析患者に多発する後天性腎嚢胞の発生メカニズム-実験研究-.透過会誌.23:595-601,1990.によれば,ラットにシュウ酸カルシウムを与えることにより,早期に腎嚢胞が形成されると報告している。そこで我々はラットにSZ,シュウ酸カルシウムを投与し,腎嚢胞を伴った腎腫瘍を作成中であるが,現在まだモデルの作成にいたっていない。 (2)組織中の増殖因子の同定 形成された腫瘍発生を伴う多嚢胞化萎縮腎モデルにおいて,嚢胞上皮と腫瘍組織内の増殖因子を検討する予定であったが,これはモデル作成後に可能となる。なお,電気泳動撮影用の写真装置をそのために導入し,手技の修得中である。
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