研究概要 |
人工透析によって末期腎不全患者の予後は改善した。しかし長期生存患者の出現によって,萎縮するのみと考えらていた固有腎に多嚢胞化萎縮腎(ACDK)が生じ、しかもACDKには腎腫瘍が多く発生するという問題も判明し,現在重要な問題となっている。しかし嚢胞上皮が増殖能を持ち,異型上皮から腺腫,さらには腺癌が生じると考えられているが,その嚢胞および腫瘍の発生機序は完全には解明されていない。そこで,腫瘍発生を伴う多嚢胞化萎縮腎モデルを作成し,腎細胞癌の発生機序にいかに増殖因子が働いているかを検討した。本来ACDKそのものは末期腎不全に伴って発症するが,ラットに腎不全を作成した上で,維持透析を行うことは不可能なので,蓚酸結晶の沈着に注目し,ACDKの発生モデルを作ることとした。この際,なるべく自然な方法を飼料に混入することとした。 6週齢SD系雄ラット50匹を4群に分け,A群をControlとし、B群に蓚酸カルシウム(OXCa):50g,C群にstreptozotocin(SZ):0.6g,D群にOXCa:50g,SZ:0.6gをそれぞれ90日間経口投与した。OXCaは重量あたり0.1%になるように混入した飼料を連日投与し、10g/匹とした。またSZは飲料水に0.1%になるように調整したものを連日自由に飲水させ、0.12g/匹とした。ラットを屠殺後,両側固有腎を摘除しホルマリン固定パラフィン包埋切片を作成し、組織学的検討はHE染色、LSAB法でサイトケラチン、ビメンチンに対する免疫組織学的染色、TUNEL法でアポトーシス検出を行った。 その結果,C群とD群に糖尿病性多飲が生じ,またB群とD群に後天性嚢胞が作成された。しかし,ラット腎には小嚢胞が散発したがACDKは完成せず,また細胞内の核の濃縮などを認めたが,腫瘍の発生はなかった。アポトーシスはいずれの群でも発現されなかった。
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