【目的】尿道弛緩に関わるNO (radicalとbioaducts)の生理学的役割を、radicalNOの消失作用を有する安定で低毒性の有機化合物imidazolineoxyl N-oxides (PTIO)を用い家兎尿道平滑筋および単離平滑筋細胞にて検討した。 【実験方法】雌性家兎の尿道を摘出し機能実験と培養細胞実験に用いた。 1)機能実験:尿道より平滑筋条片を作製しKrebs液を満たした筋浴槽内に固定し等尺性トランスデューサーを介して張力変化を記録した。Phenylephrineにより前収縮させた平滑筋条片に経壁電気刺激(FES)を行い弛緩反応を観察した。さらに平滑筋条片に臓器用透析プローブを貫通させKrebs液を潅瘤させながらFESを行い、回収した透析液内のNO量をUV detecterにより測定した。radicalNO消去剤(PTIO)およびNOS阻害剤(L-NMA)の平滑筋弛緩反応およびNOx生産量に及ぼす影響について観察した。 2)細胞実験:尿道より粘膜を除去後、細切しコレゲナーゼを含むPBSにて震とう恒温槽内で細胞を遊離させ、これをMEM培血に移しCO2インキュベータ-内で培養した。固着細胞をトリプシンで処理し、継代培養して3-4代細胞をFES付きの容器に移し、倒立顕微鏡で観察しタブレット操作型ビデオミクロメーターを用いFES時の細胞長の変化を観察し、培養液中のNOx量を測定した。細胞長の変化およびNO生成量に対するPTIOおよびL-NNA前処置の影響を検討した。 【結果】尿道平滑筋条片はEFSの周波数依存性に弛緩反応を示した。L-NNA前処置により弛緩反応はほとんど抑制されたが、PTIO前処置での抑制率は約45%であった。またFESによるNOX量はL-NNAおよびPTIO前処置でいずれも抑制されたが、抑制率はL-NNA前処置の方が有意に高かった。さらに培養平滑筋実験では周波数依存性に細胞長が短縮した。またL-NNAおよびPTIO前処置の細胞長および培養液中のNOx量に対する効果は平滑筋条片での実験と同様であった。 【結論】PTIOはrasical NOとのみしか反応しないので、尿道平滑筋の弛緩においては、radical NOのみではなくNO bioaductも関係していることが示唆された。またNO関連物質が前立腺肥大症などの尿道の閉塞性疾患の治療に、PTIOなどのNO消去剤尿失禁などの治療に有効である可能性が推察された。
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