研究概要 |
(1)腎細胞癌の発育に関する臨床的検討 過去15年間にincidentaomaとして発見され、経過観察されていた腎細胞癌21例のdoubling time(DT)を計測した。21例のDTは40日から6.4年で平均1.6年であった。初診時の腫瘍径を3群(<15mm=7例,16〜25mm 7例,26〜50mm=7例)に分けてDTを検討したが各群(<15mm=2.1±1.8年,16〜25mm=0.8±0.5年,26〜50mm=2.1±1.8年)でDTに有意差は認めなかった。またDTをGrade別(Grade 1=2.6±2.5年,Grade 2,3=1.2±1.1年)に検討したがGrade 1で成長速度が遅い傾向が認められたが有意差は認めなかった。なお21例中4例はDTが3年以上で残りの17例は全例2年以下であった。このためいわゆるslow growing typeと考えられるこれら4例を除外し、17例で腫瘍発生推定年齢を算出してみた。これら17例の初診時の平均年齢は51歳、平均腫瘍径は23mm、手術時の平均年齢54歳、平均腫瘍径は45mmであった。17例の平均DTである305日より逆算したところ腫瘍発生推定年齢は41歳と推定された。 (2)腎細胞癌の増殖様式に関する生物学的検討 初診時の腫瘍径,Grade,PCNA,Apoptosis,VEGFそれぞれ単独では腎細胞癌のDTと相関は認めなかったが、PCNAとApoptosisのバランスで見てみると腎細胞癌の成長を説明できる症例が存在した。 (3)血管新生因子による血管内皮細胞上の接着分子の発現に関する検討 HUVECをVEGFで処理した場合にICAM-1の発現増強は認められたがVCAM-1の発現は認められなかった。
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