1. 腎細胞癌の細胞増殖動態の研究 病理組織学的に証明された腎細胞癌の原発巣(18例)と転移巣(27例)でのdoubling time(DT)は前者で40-1893日、後者で10-1932日と多様であったが、原発巣の増殖率は転移巣と比較して有意に低かった(p=0.0015Mann-Whiteney U test)。原発巣におけるDTは腫瘍径、組織学的異型度、Ki-67 Labeling Index(LI)、apoptosis LIのそれぞれとは直接関係しなかったが、Ki-67 LIとapoptosis LIの比をとると、相関が認められた。一方、転移巣におけるDTは組織学的異型度とKi-67 LIとapoptosis LIの比に相関した。このことより腎細胞癌の原発巣と転移巣の増殖は、癌細胞の増殖とアポトーシスのバランスによって決定されていると考えられた。 2. VEGFの免疫機構への影響 VEGFは腎細胞癌より産生されるが、血管内皮細胞(HUVEC)をVEGFで処理するとFACScanではVCAM-1の軽度の発現とICAM-1の強い発現が認められた。VCAM-1は腎細胞癌表面に発現しているVLA-4のリガンドである。一方、ICAM-1はIL-2-activated natural killer cells(ANK ce11s)に発現しているLFA-1のリガンドである。このことよりVEGFは血管内皮細胞に作用した場合、血管内皮細胞と腎細胞癌細胞の接着を促す一方、リンパ球と血管内皮細胞の接着を促進し、腎癌細胞の増殖、転移に対して抑制的に働く可能性も考えられた。
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