研究概要 |
我々は、前立腺癌患者の予後とWHO-Mostofiの病理分類によるmeddullary/column and cordの組織像が含まれる腫瘍の割合が有意相関することを報告した。今回、さらに詳細に検討し、これらが予後不良因子であることを強く示唆するWorst histologic elementであることが確認された(論文1,2,3,4)。そこで今回、我々は、column and cordの組織に多量に含まれる間質成分に注目し、前立腺癌における上皮と前立腺由来の間質細胞における相互作用について検討を行った。 Cocultureの実験はAndrogen依存の前立腺癌細胞株のLNCaP細胞と前立腺由来の間質細胞において検討した。間質細胞はcontrolとしてTIG-1(ヒト胎児肺由来の線維芽細胞)を用い,前立腺由来の間質細胞としてFB-S-2およびFB-S-3(前立腺肥大症由来の線維芽細胞),FB-D-5およびFB-D-6(前立腺癌由来の線維芽細胞)を用いて行った。CocultureにおいてFB-S-3においてLNCaP細胞におけるDNAの合成が有意に高まることがサイミジン取込み法により確認された。この作用はcoculture後48時間でもっとも差が出ることが明かとなった。またこの効果は間質細胞の数に依存して高まることが確認された。 また、このcocultureの無血清培養液中にinterleukin-6(IL6)が確認され、また、IL6の遊出量は抗アンドロゲン剤(Chrolmadinone acetate;CMA)により減少することが明かとなり、抗アンドロゲン剤の直接作用の存在も示唆された。また、CMAによるDNA合成阻害がIL6により回復することが確認されIL6は間質細胞自身に対しては、autocrineに増殖促進的に作用することがわかった。また、間質細胞におけるIL6 mRNAの発現がCMAの濃度に影響を受けずに一定であることがNorthern blotting法により確認されCMAの間質細胞に対する直接の増殖抑制効果は間質細胞から遊出されるIL6に対する遊出阻止の効果であり、mRNAのレベルでなく細胞膜のレベルでの効果であることが示唆された。
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