研究概要 |
〈方法〉グループI:正常C57B6(B6,H-2b)マウスT細胞をRAGマウスに投与した。グループIIBalb/c(H-2d)マウスから1回の皮膚移植と4回の脾細胞による追加免疫により前感作されたB6マウスから、血清、全T細胞、CD4^+T細胞、CD8+T細胞を分離し、その各々をRAGマウスに投与した。グループI、IIの各々に対してBalb/c、B6およびCBA(H-2k)の皮膚移植を行った。 またさらにBalb/c(H-2d)マウス胎児肝細胞を放射線処置後のCBA(H-2k)マウスに移植しキメラマウス(Balb/c→CBA)を作成し、無処置コントロールCBAマウスとキメラマウスB6(H-2b)マウス皮膚を移植した。その後追加免疫後、1)コントロール群血清、2)キメラ群血清3)全T細胞4)CD4+細胞、5)CD8+T細胞をそれぞれ放射線処置後のBalb/cマウスに投与後B6皮膚移植を施行した。 〈結果〉無処置RAGマウスでは移植皮膚片の拒絶は認められた。グループIではBalb/c、CBAの皮膚片はそれぞれ13.5日、14.5日で拒絶された。B6の皮膚片は拒絶を受けなかった、グループIIにおいては、CD4+T細胞投与群ではBalb/c、CBA皮膚片はそれぞれ14日、15日で拒絶されたが全T細胞投与群ではそれぞれ9日、14日、CD8+T細胞投与群では9日、15日で拒絶された。すなわち、全T細胞投与群に比べBalb/c皮膚片の拒絶が明らかに早期におきており、Balb/cの全感作による急性促進拒絶反応によると考える。血清だけの投与群では全く拒絶反応によると考える。血清だけの投与群では全く拒絶は認めなっかた。 そしてキメラマウスを用いた実験では、無処置コントロールCBAマウスとキメラマウスB6(H-2b)マウス皮膚を移植したところそれぞれ12.1±0.64d、11.6±0.50dで拒絶され明らかに短縮しており急性拒絶反応がおきたと考えられた。しかし抗B6抗体はコントロール群では初回移植後上昇したが、キメラ群では不変であった。そして1)、2)、4)群ではそれぞれ、16.3±0.58d、15.6±0.55d、15.0±0.73dで拒絶され無処置群16.0±0.98dと差は無かった。しかし3)、5)群においてはそれぞれ9.0±1.41d、9.5±0.58dで拒絶され明らかに短縮していた。 <結語>急性促進拒絶反応をきたすには抗体の存在は必要ではなく、感作T細胞、特にCD8+細胞によっておこる事がRAGマウスモデルに於いて示唆された。そして抗ドナー抗体の無いキメラマウスモデルにおいてもT細胞、特にCD8+T細胞が強く急性促進拒絶反応と関連している事が示唆された。
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