研究概要 |
Balb/c(H-2d)マウス胎児肝細胞を放射線処置後のCBA(H-2k)マウスに移植しキメラマウス(Balb/cCBA)を作成した。無処置コントロールCBAマウスとキメラマウスにB6(H-2b)マウス皮膚を移植したところそれぞれ12.1±0.64d,11.6±0.50dで拒絶された。再度B6皮膚を移植したところ、それぞれ8.9±1.83d,8.6±0.51dで拒絶され明らかに短縮しており急性促進拒絶反応がおきたと考えられた。しかし抗B6抗体はコントロール郡では初回移植後上昇したが、キメラ郡では不変であった。追加免疫後、1)コントロール郡の血清、2)キメラ郡血清、3)全T細胞、4)CD^<4+>細胞、5)CD^<8+>T細胞をそれぞれ放射線処置後のBalb/cマウスに投与後B6皮膚移植を施行した。1),2),4)郡ではそれぞれ、16.3±0.58d,15.6±0.55d,15.0±0.73dで拒絶され無処置郡16.0±0.98dと差は無かった。しかし,3),5),郡においてはそれぞれ9.0±1.41d,9.5±0.58dで拒絶され明らかに短縮していた。 また次のような別モデルを作製しこれらの確認を行った。グループI:正常C57B6(B6,H-2b)マウスT細胞をRAGマウスに投与した。グループII:Balb/c(H-2d)マウスから1回の皮膚移植と4回の脾細胞による追加免疫により前感作されたB6マウスから、血清、全T細胞、CD^<4+>T細胞、CD^<8+>T細胞を分離し、その各々をRAGマウスに投与した。グループI、IIの各々に対し、Balb/c、B6およびCBA(H-2k)皮膚移植を行った。 無処置RAGマウスでは移植皮膚片の拒絶は認められなかった。グループIではBalb/c、CBAの皮膚片はそれぞれ13.5日、14.5日で拒絶された。B6の皮膚片は拒絶を受けなかった。グループIIにおいては、CD^<4+>T細胞投与群ではBalb/c、CBA皮膚片はそれぞれ14日、15日で拒絶されたが全T細胞投与群ではそれぞれ9日、14日、CD^<8+>T細胞投与群では、CD^<4+>T細胞投与群に比べBalb/c皮膚片の拒絶が明らかに早期におきており、Balb/cの前感作による急性促進拒絶反応によると考える。血清だけの投与群では全く拒絶は認めなかった。 急性促進拒絶反応をきたすには抗体の存在は必要でなく、T細胞、特に、CD^<8+>T細胞が急性促進拒絶反応をきたす事が示された。この事は、正常マウスにおいても感作T細胞、特に、CD^<8+>T細胞が強く急性促進拒絶反応と関連している事が示唆された。
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