研究概要 |
根治的腎摘出術を施行した腎癌および非癌部(正常部)対しamplication protocol(TRAP)assayキット(BOEHRINGER MANNHEIM GmbH Germany・日本遺伝子研究所、仙台)よりテロメラーゼ活性発現を検討した。腎細胞癌46症例の60%でテロメラーゼ活性を認めたが、近接正常組織ではこの酵素活性を認めなかった。病理組織学的所見および臨床経過と比較検討では、テロメラーゼ活性発現と、腫瘍径、進展度、組織亜型およびDNA ploidy型との間に相関を示さなかったが、腫瘍の分化度および血清IAP濃度との間に正の相関を示した。したがつて、腎細胞癌において、テロメラーゼ活性の発現の検討は、スクリーニングとしての役割は限られててるものの、予後不良の因子となりうることが示唆された。 次に、膀胱癌に対するTRAP法の特異度を改善する目的で、テロメラーゼ・サブユニット関連遺伝子発現を検討した。膀胱全摘除術およびcold cup biopsyにより得られた膀胱癌組織および膀胱正常組織において、テロメラーゼ構成要素であるhEST2/hTRTおよびTLP1/TP1mRNAの2種のサブユニットをRT-PCR方により検討した。検体よりTotal RNAを抽出し、1μg相当のRNAを採取した。RNA PCR core kit Gene Amp^<TM>(Roche Morecular System)を用いてRT法を行い、cDNAを合成、特異的なブライマーによるPCR反応で、目的とするTLP1/TP1,hEST2/hTRT遺伝子を増幅した。陽性対照はGAPDHを用いた。増幅されたPCR産物はアガロースゲル上で電気泳動しトランスイルミネーターで可視化し検索した。 膀胱癌組織27例において、hEST2/hTRTは全例で、また、1LP1/TP1は25例(92%)でおのおの発現を認めた。膀胱正常組織では全例でhEST2/hTRTの発現を認めなかったが、TLP1/TPlは60%でその発現を認めた。よって、RT-PCR法のによるhEST2/hTRT遺伝子発現の検索は膀胱癌のスクリーニングに利用できるものと考えらた。
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