研究概要 |
【目的】画像による前立腺癌の病期診断には限界がある。prostate specific antigen(PSA),prostate specific membrane antigen(PSM)の末梢血中のmRNAを検出し、病期診断への応用を検討した。【対象と方法】前立腺全摘除術(32例)と、stage D2(31例)の前立腺癌患者、前立腺肥大症20、急性前立腺炎5、健常男性と女性各40例を対照群とした。末梢血よりRNAを抽出し、PCR法により、PSA、PSM mRNA由来産物の検出を行った。【結果】1.PSA-PCR,PSM-PCRは、10^6個の白血病細胞(K562)中の1個の前立腺癌細胞(LNCaP)を検出した。2.対照群はすべて陰性であった。3.前立腺全摘除術症例で、手術診断病期とPSA-PCR,PSM-PCRの結果を比較した。PSM-PCRは有意に病期の進展と相関していたが、PSA-PCRは相関していなかった。(PSM:p=2.00×10^<-3> PSA:p=0.06,Kendall's correlation test)。4.Odds ratioでは、PSM-PCR陽性例は陰性例より25.7倍精嚢浸潤の可能性が高く、8.9倍前立腺外浸潤の可能性が高かった。5.通常の諸臨床検査法と比較検討したところ、PSM-PCR法のみが前立腺限局癌識別が可能であった(p=0.012,Fisher's exact probability test)。6.未治療転移症例のPSM-PCRの陽性率はPSA-PCRに比べ有意に高かった(p=0.025,McNemar test)。【結論】前立腺限局癌を鑑別する上でPSM-PCR法は、他の診断法と比べて統計学的に有意に有用な検査法であった。
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