研究概要 |
再発性蓚酸カルシウム結晶凝集の主たる阻止物質はcrystal matrix protein(CMP)とヘパラン硫酸であることを発兜した。CMPのアミノ酸配列解析でヒトプロトロンビンのactivation peptideであることが判明した。抽出されたCMPは明かに結晶凝集阻止作用を示した。ヒト腎においてこのプロトロンビン関連蛋白が検討されたことはなく、その具体的性質、性状などは不明である。本研究の目的はCMPの腎における局在の同定と性状解明およびヒトプロトロンビン遺伝子が腎において結石形成と関連していかに発現するかを解明すること、2)血中腎由来prothrombin測定法の開発と各種泌尿器科疾患、とくに尿細管障害に関する臨床的応用を実施することにある。 本年度の研究実績 Prothrombin mRNAはヒト腎poly(A)RNA、ヒト腎cDNA libraryおよび手術時得られたヒト腎組織からその発現を確認した。ラット腎においてprothrombin mRNAの発現を確認でき、結石形成ラット腎では発現量は増加していた。 ヒト腎cDNA libraryの核酸配列を肝由来prothrombin cDNA、ゲノムcDNAと比較した結果、3カ所で変異を発見した。cDNA(position475)は異なったアミノ酸を産生すると考えられた(N to T)。 52人の腎提供者、19人の腎細胞癌患者、11人の慢性腎不全患者、7人の急性拒絶反応、9人の腎移植患者で血中に存在する腎由来prothrombin濃度を測定しその意義を検討した。 血中濃度測定はanti renal prothrombinモノクローナル抗体を使用してsandwich-type enzyme-linkedimmunosorbent assay(ELISA)で測定した。 血中の腎prothrombin濃度は腎提供者、腎細胞癌、慢性腎不全、腎移植患者、急性拒絶反応でそれぞれ0、2,7±125.8、23,0±29.6、58.9±77.0、206.5±450.2mAU/mlであった。腎移植後急性尿細管壊死となった患者で経時的に測定した結果、術後高値を示すが尿細管機能の回復にともない正常化した。,このことから血中に存在する腎prothrombin測定は尿細管細胞の機能を反映するものと考えられた。また、急性拒絶反応、腎細胞癌患者においても高値を示すものがあった。
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