研究概要 |
妊娠初期における黄体機能の維持には下垂体より分泌される黄体化ホルモン(LH)やプロラクチンが関与しているが,Dopamine D2 receptor(DD2-r)刺激薬は下垂体からのプロラクチン分泌を阻害することがよく知られている.本研究は,DD2-rが妊娠の成立(黄体機能維持)および妊娠維持に果たす役割を包括的に明らかにするために,1)DD2-r刺激薬であるCabergoline(CAB)が培養顆粒膜細胞,黄体細胞のステロイドホルモン産生に及ぼす影響を検討すること,2)卵巣におけるDD2-r mRNAの発現を調べること,を目的とした.結果1)顆粒膜細胞がin vitroで分化・誘導され黄体化していく過程に及ぼすCABの影響について検討するため,ラット未分化顆粒膜細胞をFSH存在下で培養し,CABを添加して培養液中のprogesterone(P4)およびestradiol(E2))濃度を測定した.CABは低濃度(10^<-3>M)からラット培養顆粒膜細胞のP4産生を有意に抑制し,高濃度(10^<-5>M以上)ではE2産生も有意に抑制した.また,生体内で黄体化した黄体細胞に及ぼすCABの影響について検討するため,ブタ黄体細胞にCABを添加して培養し,培養液中のP4濃度を測定したところ,LH存在下および非存在下のいずれにおいても,CABは低濃度(10^<-3>M)からブタ黄体細胞のP4産生を有意に抑制した.結果2)RT-PCRにて,コントロール,排卵誘発中,排卵前,排卵時,排卵後黄体形成時のマウス卵巣におけるDD2-r mRNAの発現を調べた結果,いずれの卵巣においてもその発現は認められなかった.本研究によって,顆粒膜細胞,黄体細胞に対するDD2-r刺激薬の,直接的なステロイドホルモン産生抑制作用が明らかになり,DD2-r刺激薬が副作用の少ない安全な性交後避妊薬・妊娠中絶薬となりうる可能性が示された.
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