1、赤芽球系細胞を胎児肝組織より分離してB19ウイルスを感染させて形態変化をみたところ感染後2日からアポトーシスに特徴的な核化像が観察された。感染細胞はB19に対する特異的な単クロン抗体で染色されあたがその一部はTUNEL法でも同時に染色されアポトーシスを起こしていることが確認された。感染細胞からDNAを抽出しアガローズゲルで電気泳動させたところはしご条の泳動パターンが観察されたが、非感染細胞でも同様の泳動パターンが観察された。これは初代培養系では赤芽球系細胞が全体の約20%を占めるのみで他系の芽球細胞も多数混在しているためであろうと推測された。そこでB19が感染することが確認されている赤芽球系細胞株UT7を用いて上記と同様の感染実験を行なった。感染細胞では生存率が減少しアポトーシスに特徴的な核の形態変化も観察され、TUNEL法でも陽性で、アガロースゲル電気泳動でもはしご状のDNA泳動パターンが確認された。これらの現象は非感染細胞では見られなかった。 2、B19による細胞致死機構にはウイルスの非構造蛋白NS1が重要な役割を果たしていると考えられているが、NS1が細胞に発現させると細胞障害が起こるためそれ以上の解析が困難であった。そこでNS1遺伝子をLacオペレーター含有ベクターに組み込み、Lacリプレッサー発現ベクターと一緒にUT7にトランスフェクションした。すなわち普段これらの細胞はNS1蛋白を発現することなく増殖を続けるが、ひとたび発現抑制を解除する物質(IPTG)を添加するとNS1蛋白が細胞内で誘導発現するという実験系を確立した。NS1蛋白を誘導発現させた培養細胞では生存率がNS1の誘導しない細胞に比較して低下した。またNS1蛋白を発現した細胞では初代培養系細胞と同様にTUNEL法や電気泳動でアポトーシスが起こっていることを確認した。 3、このようなB19感染による細胞障害機構がin vitroのみでなく生体内でも起こってる現象であることを確認するため、胎児水腫で死産となった症例の組織を集積して、胎児赤芽球がアポトーシスを起こしていないかどうかを検討する予定である。
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