1、B19ウイルスの非構造蛋白NS1を誘導発現する赤芽球系細胞株を樹立し、NS1蛋白が直接アポトーシスを誘導することを示した。次に遺伝子組み替えによってNS1蛋白がATP結合能を失うように変異NS1遺伝子を作製し、同様な方法で培養細胞に遺伝子導入し、変異NS1蛋白を誘導発現する細胞株も樹立した。その結果、変異NS1蛋白が発現しても細胞はアポトーシスを起こさなかった。すなわちアポトーシス誘導にはNS1蛋白のATP結合部位が重要であることを示した。さらに上記細胞にアポトーシスを抑制する遺伝子Bcl-2を遺伝子導入したところNS1によるアポトーシス誘導が顕著に抑制された。 2、胎児水腫で死産となった10症例の剖検組織をTUNEL法で染色したところ、血管内に陽性細胞が散見された。組織をTUNEL法と抗B19単クロン抗体で二重染色することによって感染細胞がアポトーシスを起こすことを証明した。次にアポトーシス誘導の分子機構を解明する目的で、組織を種々のアポトーシス関連因子に対する抗体を用いて免疫染色した。カスペース3に対する抗体では感染細胞は陽性となったが、カスベース1に対する抗体では陰性であった。NS1蛋白発現細胞でもやはりカスペース3のみが陽性となり、この細胞培養系にカスペース3阻害剤の添加によってアポトーシスが抑制された。このようにB19感染によって起こる赤芽球のアポトーシス機構にはカスペース3が重要な役割を担っていることが示された。一方FASやパーフォリン、グランザイム、Bcl-2に対する抗体では陽性所見はみられなかった。 3、以上の研究はB19によって起こる赤芽球の破壊がアポトーシスによることを証明しその機構を明らかにした。今後胎児水腫発症の予防法や治療法の確立に大いに貢献することが期待される結果といえる。
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