研究概要 |
1)p16-cyclinD/cdk4-Rb系の遺伝子変異と卵巣癌化の分子機構との関わりを、ヒ卜卵巣癌細胞株を用いて行った。癌抑制遺伝子と考えられているp16あるいはRbの高頻度の機能喪失が卵巣癌株において観察されて癌遺伝子と考えられているcyclinDの過剰発現が観察された。卵巣癌の約90%においてp16・cyclinD/cdk4・Rb系の一つの遺伝子に機能異常が存在することが示された。 2)ヒト卵巣癌組織のSmad3遺伝子の変異を解析した。Exon2で7例(29%)にLOHが観察され、2例にバンドシフトが観察された。Exon5では1例にバンドシフトが観祭された。ヒト卵巣癌の41,7%(10/24例)でSmad3に異常が存在することが示唆された。 3)ヒト卵巣癌組織を用いて、TGF・β R I, TGF・β R II, Smad2, Smad4の変異の有無を解析した。TGF・β R I 遺伝子Exon5内で10例(31.3%)にframeshift mutationが観察された。Frameshift mutationが観察された症例ではTGF・β R I蛋白の発現がみられなかった。 4)hMTH1遺伝子について卵巣癌組織49例、ヒト卵巣癌組織株9例を用いて解析した。卵巣癌組織49例中1例と卵巣癌培養細胞株9例中1例(3.4%)で、NsiI多型が認められた。癌組織12例、細胞株2例(24.1%)において、codon119にサイレント変異が認められた。 5)子宮内膜癌組織でのER-βの発現様式と、癌の準展や悪性度との関連について検討した。子宮内膜癌組織36例の臨床進行期、細胞分化度、筋層浸潤の深さとER・β/ER・αの発現比を比較した。多変量解析の結果、ER・β/ER・α ratioと筋層浸潤の深さとの間には有意な相間があり、筋層浸潤の程度が深いものほどER・βがER・αに比べ相対的に強く発現していた。 6)エストロゲンによって子宮内膜癌に誘導される遺伝子を同定し、癌化との関わりを解析することを目的としてDifferential Displayを行った。遺伝子fragment(Probe1)と遺伝子fragment(Probe2)を単離した。Probe1はDouble strand DNA break-repair geneと、Probe2はmouse E46 LIKE geneと、それぞれ99%、98%のホモロジーを有していた。DSBR遺伝子は、遺伝子修復機構の他に,Eによる細胞増殖に関与する遺伝子であり、マウスの脳に発現していること以外その機学が未知であつたE46遺伝子には、Eによる細胞増殖を抑制する働きがある可能性が示唆された。
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