研究概要 |
iNOSは未熟な健常卵胞の顆粒膜細胞(GC)にのみ存在していること,また卵巣のiNOSレベルの一過性の低下が未熟な卵胞の発育・閉鎖の誘導に関連のあることを報告してきた.今回,卵胞発育促進および閉鎖誘導因子が直接GCのiNOSレベルに与える影響を調べるとともに,GCの増殖およびアポトーシスに対するNOの効果についても検討した.【方法】(1)Wistar系幼若雌ラットより採取したGCの培養系に,卵胞発育促進因子としてEGF(1〜100ng/ml)あるいは閉鎖誘導因子としてgonadotropin-releasing hormoneアゴニストのbuserelin(10^<-7>〜10^<-5>M)を添加し,GCにおけるiNOS mRNAの発現をRT-PCR法にて解析した.(2)GC培養系にEGF(10ng/ml)およびNO供与剤のSNAP(0.05〜0.5mM)を添加し,DNAへの[^3H]-チミジンの取り込み量を比較した.(3)GC培養系に10^<-6>M buserelinおよび0.5mM SNAPを添加し,DNA断片化を示すTUNEL陽性細胞の出現率を比較した.【成績】(1)GCにおけるiNOS mRNAの発現量は,EGFまたはbuserelinの添加により用量および時間依存的に低下した.(2)GCのDNA合成は,SNAPにより用量依存的に抑制された.一方,EGF添加により促進されたDNA合成は,0.5mM SNAPにより有意に抑制された.(3)GCのTUNEL陽性率はbuserelin添加により促進されたが,SNAPにより有意に抑制された.【結論】GCのiNOS発現が卵胞発育促進または閉鎖誘導因子により低下すること,さらにGCの細胞増殖およびアポトーシスがNO供与剤により抑制されることから,iNOSにより合成されるNOは,未熟卵胞において安定化因子として機能していることが示唆された.
|