本年度の研究では、プロラクチン産生細胞の増殖に関するIGF-1とエストロゲンの相互作用を調べるとともに、プロラクチン産生細胞におけるIGF-1受容体の存在を検討した。 【研究成果】 1. (1)エストロゲンのプロラクチン産生細胞の増殖促進作用にIGF-1及びその情報伝達系が必要かを調べた。100pM及び1nMのエストラジオール投与によってプロラクチン産生細胞の増殖率はそれぞれ約10及び7倍の増加を示した。このエストラジオールによるプロラクチン産生細胞の増殖増加に対して、10ng/ml IGF-1のプロラクチン産細胞増殖促進作用を阻止するのに充分であった1μg/mlの抗IGF-1抗体の前投与は有意な影響を与えなかった。 (2) IGF-1の増殖促進作用の細胞内情報伝達に関与するMAP kinase cascadeの阻害剤であるPD98059は、基礎増殖率に対しては影響を与えなかったが、50μMの濃度でエストラジオールの増殖促進効果を著明に抑制した。 2. 培養下垂体前葉細胞を用いてIGF-1受容体免疫染色のための、最適の固定液、抗体及び染色法を調べた。固定液は、冷メタノール、フォルマリン、paraformaldehydeの中ではparaformaldehydeが最適であり、4%、20分間が適当であった。IGF-1受容体抗体はOncogene社の抗体が最適であった。プロラクチンとIGF-1受容体の二重免疫染色の方法は、抗体の交差性等の問題があるためには未だ確立に至っていない。
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