研究概要 |
子宮平滑筋肉腫は臨床的に子宮筋腫に類似しており、それらの鑑別診断には困難をきたすことが多い。子宮筋腫は性ステロイド依存性に増殖する腫瘍と考えられており、性成熟期女性に好発生し閉経になると縮小するという特徴をもつ。一方、子宮筋肉腫は閉経女性に好発することから性ステロイドとは無関係に増殖するものと考えられるので、閉経後に急激に増大する子宮腫瘤は子宮筋肉腫である可能性が高いと考えられている。現時点において子宮筋肉腫は病理組織学的に細胞核分裂数、細胞異型、壊死像の有無等により総合的に診断されているが、子宮筋肉腫とatypical leiomyoma等の子宮筋腫との鑑別や、子宮筋肉腫の悪性度や予後判定については未だ十分な診断法は確立されていない。本研究において、子宮平滑筋肉腫と子宮筋腫の鑑別や、子宮平滑筋肉腫の悪性度の診断や予後判定に新たな指針を得るために、子宮筋腫と子宮平滑筋肉腫において、細胞周期調節因子、性ステロイドホルモン受容体を分子レベルで比較検討することによって、子宮平滑筋肉腫の悪性化機構を明らかにすることを目的とした。1)子宮筋腫、子宮平滑筋肉腫についてER,PR、ki-67陽性細胞数また腫瘍抑制遺伝子p53に対する抗体を用いて免疫組織学的に検討したところ、子宮筋腫においては、筋腫のタイプにかかわらず全例にPRは強陽性であり、ERは53例のうち49例で陽性で、p53及びki-67陽性細胞数と筋腫のタイプとの間では相関性はなかった。一方、子宮平滑筋肉腫では、14例中13例でERは陰性、PRは14例中9例で陰性であり、Ki-67の陽性細胞は、子宮平滑肉腫では、子宮平滑筋腫に比べほぼ20倍以上の強陽性を示した。また子宮平滑筋肉腫において、p53は14例中7例に強陽性を認めた。2)子宮筋腫、子宮平滑筋肉腫の各組織において腫瘍抑制遺伝子p53が腫瘍形成にどのように関与するのかについて、p53の異常が遺伝子レベルで起こっているか否かについてp53のExon 5,6,7,8のDNAの塩基配列を解析するDNA sequence法により明らかにした。子宮平滑筋肉腫14例中4例に突然変異が検出されたが、p53陽性を示した子宮筋腫からは、p53遺伝子の変異は検出されなかった。さらに子宮肉腫14例中、p53遺伝子に点突然変異が検出された4例の患者は、術後1年半年以内で全員死亡しておりp53遺伝子に点突然変異が予後因子の一つであると考えられる。
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