研究概要 |
子宮癌肉腫は、同一腫瘍内に癌成分と肉腫成分が同時に存在した多種多様な組織像を示す腫瘍である。発生起源には従来より3つの説、即ちcollision theory,combination theory,composition theoryが提唱されているが、これらの説の真否については解明されていなかった。本研究では、子宮癌肉腫の発生起源を分子生物学的手法を用いることにより解明することを目的とした。 クロナリティ解析については、子宮癌肉腫の癌成分と肉腫成分からなる別々に抽出したDNAを用いて、Andorogen Receptor(AR)遺伝子のメチル化による不活化のパターンを解析した。また、悪性化に関与する遺伝子として、癌抑制遺伝子p53と癌遺伝子K-rasの解析を行った。その結果、子宮癌肉腫の約85%はcombination tumorであるが、15%の子宮癌肉腫はcollision tumorであることを解明した。また、p53、K-rasの点突然変異がそれぞれ32%、24%にみられることを明らかにした。 さらに、子宮体部癌肉腫の発生起源と臨床的特徴・予後との関連について検討し、collision tumorの方が予後不良であること、遠隔転移の率がcombination tumorより高い傾向にあることを見出した。本研究は、子宮癌肉腫の悪性化に関与する遺伝子変化を解析すると共に、世界に先駆けて子宮癌肉腫の発生起源を解明した。本研究で用いた手法により、子宮癌肉腫の個々の症例における発生起源を明らかにすることが可能になり、将来的には、本腫瘍の治療の個別化が可能になると考えられた。 また、婦人科の他の臓器に発生する癌肉腫の発生起源について、同じ分子生物学的手法を用いて検討した。その結果、膣、卵巣、乳房に発生する癌肉腫の多くがcombination theoryに基づいて発生していることを見出した。
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