研究概要 |
上皮性卵巣癌の発生・進展とテロメレース活性との関連を知るために,上皮性卵巣癌,境界悪性腫瘍,良性卵巣腫瘍,および正常卵巣の表層上皮を対象とし,TRAP法のよりテロメレース活性を検出した.テロメレース活性検出例では,NIHimageを用いてInternal Telomerase Assay Standard(ITAS)に対する活性強度の相対値を算出した.SSCP法により,p53遺伝子変異の有無を検索し,テロメレース検出率,テロメレース活性の検出率および活性強度を各病変において比較検討する.とともに,卵巣癌症例における予後因子との関連を検討した.テロメレース活性は上皮卵巣癌の80.5%,境界悪性腫瘍の66.7%に検出されたが,良性卵巣腫瘍および表層上皮では検出できなかった.卵巣癌症例の活性強度は境界悪性腫瘍に比して有意に高値であった(12.1vs3.6).p53遺伝子とテロメレースとの関連はみられなかった(変異例86.7%,正常例60.0%).一方,卵巣癌症例において,臨床進行期,組織分化度,リンパ節転移の有無および生存率で検出率に差を認めなかった.テロメレース活性強度はIII・IV期症例,リンパ節転移陽性症例で有意に高かかった.以上の成績から,テロメレース活性は上皮性卵巣癌の予後因子とはならないものの,その発生と進展に関与する可能性が示唆された.化学療法前後におけるテロメア長およびテロメレース活性の変化を検討した.テロメア長は有効例・無効例ともに一定の傾向を示さなかった.化学療法により,テロメレース活性は無効例のみで増強し,減弱は有効例のみでみられたことから,テロメレース活性と薬剤耐性との関連が示唆された. 今後,p53欠損卵巣癌細胞株SK-OV3にp53遺伝子を導入して,テロメアの変化を解析予定である.
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