研究概要 |
p53遺伝子異常薬剤耐性獲得癌におけるテロメアの変化と役割を知ることにより癌遺伝子治療の臨床応用に関する新知見が期待される.卵巣癌症例のp53遺伝子変異と薬剤耐性について検索した結果,卵巣癌のp53遺伝子異常は40-50%にみられ,耐性癌で頻度が高いことを確認した. CAGpromotorを組み込んだp53組換えアデノウイルスAxCAp53を作製し,このベクターが高い遺伝子導入効率と低い細胞毒性を有すること,p53遺伝子欠損卵巣癌株SK-OV3を用いてCDDPとの併用効果を検討した結果,CDDPに対する感受性増強を明らかにした. 上皮性卵巣癌41例,境界悪性腫瘍3例,良性卵巣腫瘍2例(漿液性腺腫)および正常卵巣3例の表層上皮を対象として,TRAP法によりテロメレース活性を検出し,活性検出例ではNIHimageを用いてInternal Telomerase Assay Standardに対する活性強度の相対値を算出した.SSCP法により,p53遺伝子変異の有無を検索した.テロメレース活性の検出率および活性強度を各病変において比較検討するとともに,卵巣癌症例における予後因子との関連を検討した.テロメレース活性は上皮性卵巣癌の80.5%と境界悪性腫瘍の66.7%に検出されたが,良性卵巣腫瘍および表層上皮では検出できなかった.卵巣癌のテロメレース活性強度は境界悪性腫瘍に比して有意に高かった(12.1vs3.6).テロメレース活性の検出率は,卵巣癌の臨床進行期,組織分化度,リンパ節転移の有無および生存率と関連を示さなかったが,テロメレース活性強度はIII・IV期症例とリンパ節転移陽性症例で有意に高かった.p53遺伝子とテロメレース検出率との関連はみられなかった.p53遺伝子欠損細胞におけるTERT遺伝子の発現とアポトーシス誘導について検討中である.
|